昔八軒町には、数件の絵馬を扱う店ができて、清見街道の入り口だったために、そこでは、
絵馬を描く店舗が軒を連ねたようです。

先日、池本呉服さんにお邪魔しました。

池本さんは、絵馬の描き手として、6代続く老舗です。江戸時代の終わりごろから現代に
至るまで、150年ほど続いた老舗です。先代はお亡くなりになりましたが、生前はいろいろと
個人的にもお世話になりました。


入り口では、描かれた絵馬に、名前を記入されておりました。


店内には、所狭しと数々の絵馬が貼られています。この馬の型は数十種類あって、その型を
下に敷いて、上からなぞって馬を描くそうです。


池本屋のいわれについて、こんなパンフがありました。

「飛騨の松倉絵馬
毎年8月9日・10日には各自飼っている馬の毛色に似た紙絵馬を
買い求め、古来より霊験あらたかな高山西郊の松倉観音に代参
させ、祈祷の朱印を受けたものを自宅の玄関の壁に馬の頭を家
の奥に向けて貼れば一年間の息災開運は疑いなしと信じられ、
今なお百数十年の昔の尽に、市内八軒町筋で賑やかな、「絵馬
市」が開かれ、殊に絵馬の売買に当り、一円を「一万両」百円
なら「百万両」と称えるのを、俗に「松倉相場」と言って広く
親しまれています。
昔から夏の高山の楽しい年中行事であり今日は全国的に知られ
る奇習です。
本来、松倉絵馬市は19世紀前半に陣屋前通りに始められ、最盛期
には二十数軒もの絵馬屋が軒を並べたと伝えられています。
そしてこの内、時の内務省より出版権を認可された店を俗に
「八軒町五人衆」と言い、互いに腕を競い合っていましたが、
昭和二十年の終戦を境に、資材の不足、技術者の不在などのため
二軒になり、その一軒もやがて廃業し、現在池本屋だけが昔
ながらの手作りの古木版、肉筆の技法、しきたりを忠実に守り
続け、葉書大から畳二畳の大きさがあり全部手描にて江戸時代
から続いております。明治34年内務省の許可を取得し、名実とも
に飛騨の絵馬市の総版元として今に至っております。
お問い合わせ、御注文は左記宛お申し出下さいませ。

岐阜県郷土工芸品指定
(社)岐阜県観光連盟　推奨観光土産品
高山市推奨土産品
飛騨高山絵馬市発祥の地

松倉絵馬総版元　六代
手描き絵馬　　池本屋
〒506-0012　岐阜県高山市八軒町1-47
電話0577-32-0511　ＦＡＸ0577-32-0511

古い絵馬は私どもまで御持参又はお送り下さいましたならば、
松倉観音へお納めし御供養いたします。
類似品にご注意下さい。」


池本屋さんの絵馬の一枚。


店内に墨字で書いてありましたが、こんなにたくさんの種類の祈願を受けていただける
ようですね。


お客様のご注文に合わせて、色を変えたり、修正を施す、池本さん6代目。


店内には、昭和初期のものでしょうか、素玄寺の先々代ご住職と思われる方が馬に乗って
観音様を懐に抱き、松倉登山をする写真がありました。（ちょっとピンボケですが）


店内でいろいろとお話しておりましたら、とても貴重な版の一つを見せてくださいました。
この紙を下に敷き、上からなぞって絵を描くそうです。


明治34年に内務省から版権をいただいてから、この印を押すことになったそうです。
とても貴重なものを拝見することができました。

現在も、八軒町で絵馬の商いをされております。
一度伺ってみてはいかがでしょうか。

徳積善太