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2/25放送分 「飛騨のめでたについて」

みなさん、こんにちは。この時間は、飛騨歴史再発見のコーナーです。
このコーナーは、飛騨の生涯学習者 第2号 ながせきみあきがお届けしてまいります。

今年ももうすぐ3月に入ります。飛騨ではまだ寒い日が続いていますが、いかがお過
ごしですか? 11月に国分寺のいちょうが青いまま一斉に落ちたために、今年は雪が
多いと言われていましたが、暮れからお正月にかけての どか雪が降った以外は
今のところ、まとまった雪が降りませんでしたね。

 高山市も飛騨市も除雪の予算というのが、毎年数億円に上りますから、市民としては
ありがたかったのではないでしょうか。土木建築業者の方は、売り上げ減となったことと
思いますが、雪が少ないというのも一長一短ですね。

 さて、今日の放送は、高山の宴会でなくてはならない風習、めでたのお話をしたいと
思います。
 ある方から、お尋ねがありました。"高山では「めでた」が出る前は立ってはいけない
と習っておりますので「めでた」の前には『席にお戻りください』は、言いすぎなんじゃ
ないかと思いますが、地方で違うのでしょうか?」ということでした。
 また、「荘川の方に聞くと、荘川には めでた が無いそうです。周りではあるのに
めずらしいですね。」" というお話でした。

 "飛騨高山で、現在でも厳格に守られている酒宴のしきたりは、「『めでた』が出る
までは、席を立って、酒を注ぎに行っては行けない。」ということが一般的です。
 あるとき、司会者の方が、飛騨の伝統を言い忘れてしまい、お伝えにならなかった
ので、飛騨地域以外の方も参加した酒宴で、めでたの前に無礼講になった経験が
あります。

 「お席におもどり下さい」は皆さんへのせめてものお願いのようですが、皆さんも、
飛騨の宴会に於いては、この「めでた」の前は席を立たないようにして下さい。

 さて、これには、いろいろな意味があります。 まずは、
①料理をしっかりいただいて、悪酔いを避ける。
②料理を作って下さった方に感謝する。
③座席の両側の方が知らない方でもちゃんと交流を持つ。
④宴席といえども目上の方などに失礼のないようにする。
                     。。などの4つの意味があると伺っております。
2/25放送分 「飛騨のめでたについて」
 次に「めでた」の歌詞についてですが、「めでた」の歌詞は、次のようになっています。
「めーでーたー、めーでーーたーのー、(以上歌い出し)わーかーまーつー、うーーさー
まーー、はーよーおーえーえーだーもー、おーえーさーあー、かーよーうるー、うーはー
あーもー、おーしゅーげ、えーるー」
                つまり「めでためでたの若松様よ 枝も栄える 葉も繁る」
と言う歌詞です。

 これは、山形の花笠音頭と通じるところがありますが、これには諸説あって、金森公が
山形の上山に転封されたときに、再度郡上八幡へ転封されます。そのときに一緒につい
てきた山形出身の家臣が広めたとか、北陸地方から入ってきたとか、いろいろ言われて
おりますが、実は全国にこの祝い歌はあって、そのルーツは実のところわかっていません。

 高山では「葉もしげる」の部分では、「し」が「死」につながるとの意味もあり、わざと「しゅ」
と言っているなどと言うお話もあります。
2/25放送分 「飛騨のめでたについて」
 このほかに飛騨地方では、上宝地区のように「みなと」と呼ぶ地方もあり、これは、川流し
をした木材が無事に「湊」へ流れ着いたときにこの歌を祝い歌として、中乗りさん達が歌った
という話に基づくものです。

 今でも、上宝のほかに神岡や上麻生では「みなと」と呼ばれているそうですが、いつ頃から
歌われたものなのかははっきりしません。
 この「みなと」の節回しは、高山や古川の物と比較して、マイナー系のコード進行でできて
おり、聞いた感じが暗い感じがします。

 「めでた」の節についてですが、高山のめでたには、大まかに2種類の節があります。
一般に伝わっているものは、保浅流と呼ばれているもので、昭和40年代以降に、民謡師の
保浅太郎氏が宴席などで一般に広めたという話があります。
 もう一つは、民謡調のもので、民謡師の小坂氏によって歌い継がれました。この節回しは
微妙に保浅流とは違いますが、現在の宴席では、一般に保浅流のものが出回っています。

 それ以前のめでたが、どのような節回しであったのかは、私も余り詳しく知りません。
ご存知の方は、お知らせください。

 さて、ちょっとここでブレイクしましょう。
 今日は、「桑江知子で 私のハートはストップモーション」をお届けします。
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今日のひだ歴史再発見は、高山のめでたについて、お話しています。

 さて、飛騨の「めでた」についてですが、 これが飛騨となると節回しが地域によって違います
し、呼び名も違うところがあります。文章で書き表すのは非常に難しいのですが、高山めでたは
メジャー系のコードで明るい感じになっています。
 また、一般には、「めーでーたー」で歌い出しが行なわれますが、もともと旦那衆の行なって
いためでたは、端唄に「松尽くし」というのがあり、これを歌ってから「めーでーたー」となります。

 「松尽くし」とは、松の数え歌で、
「一本目には、市の松。二本目には 庭の松、三本目には下がり松・・・」などという歌詞になって
います。今では、高尚な宴会以外、使われていません。

 また、昔の宴会では、めでたの後に続くのが、「東海道宿続き」で、東海道五十三次の歌へと
続き、「かいな、かいな、親切かいな」という梅川忠兵衛さんへの歌と続きます。
ただし、最近では古老の方が歌われるだけで、ほとんどの宴会では歌われることは少なくなりました。

 高山めでたと節回しが類似しているものは、「朝日めでた」と「丹生川めでた」・「清見めでた」
です。この違いは節回しが微妙に異なることですが、歌詞はほとんど同じ物です。
 また、荘川地方には、「めでた」という歌自体がありません。
 また、高山の大工さんの間では、「返し」というのがあって、私も一度だけ聞いたことがあります。

 話は変って、古川めでたとなると、節回しも異なりますし、めでたとは呼ばず、「若松様」と呼び、
一般には「ぜんぜのこ」を続けて歌うことで有名です。
こちらでは、「わーかーまつー、さーまー」の節回しで始まりますが、どちらかというとマイナーコード
の暗い感じで始まるのが特徴ですが、終了後は、

 「めでーたー、めでーたの、わかまーつーさーまーよ、枝も栄ゆる、葉もしげーる、ついたとて
なんとせず、ぜんぜのこ、そりゃ、まんまのこー」という歌が続き、明るい民謡が続くのがならわしです。

 以前、古老の方より、「この歌詞が40番以上もあるんやさ」などと伺った事がありましたので、
一度調べて見たいと思い、古川の名物語りべ 鮎飛さんにお尋ねしたところ、「以前、そういう話を
わしも聞いていて調べた事があったんやさ」といって、歌詞カードをコピーして下さいました。
ちょっとここで、面白いものを紹介させていただきます。
まずは、
一般的なもの 
※2.音に名高い 古川祭り 起し太鼓の 勇み打ち
※9.ここの館は 目出度い 館 鶴が御門に 巣をかけた
※10.鶴が御門に 何んと云て 架けた お家繁昌と 云て 架けた

次に有名なもの
※3.道も一筋 杉本様え 祈る心も 一筋に
※4.嫁を見立の 三寺参り 髪を結わせて 礼参り

飛騨やんさの歌詞と同じもの
※6.婆さどこ行きやる 三升樽下げて 嫁の在所へ 孫抱きに
※12.貴方百まで わしゃ九十九まで 共に白髪の はえるまで

端唄からきたもの 
※20.丸い玉子も 切よで四角 ものも云いよで 角が立つ
※11.差いた盃き 中見て上れ 中は鶴亀 五葉の松

下ネタのもの
※18.色で身を売る 西瓜でさえも 中にや 黒の 種がある
※19.酒はよい物 気を勇ませて 顔に五色の 色を出す
※30.見たよな顔だと 振り向く二人 何時かホテルで 寝た相手
※39.いやなお客の 親切よりも 好きなお方の 無理がよい

これ以上は、放送禁止用語が混じっておりますので、この辺にしたいと思います。
歌詞からすると、ホテルが入っているあたり、最近の替え歌のようですね。
 古川では一般的に、酒宴の席で、歌い回しを行なうことが多い様で、場を盛り上げる
ために即興で歌詞を作って歌うことが多かったようです。
私の聞いたところでは、100番近くまであるとのことでしたが、現在はっきりしているもの
をご紹介しました。下ネタも含まれていることがわかります。

 最近の企業においての「めでた」ですが、K木工さんでは、新入社員に対してめでたの
指導を行なっているそうです。
その文を紹介しますと、

「宴席でも飛騨地方の独特のしきたりがあります。新年会、忘年会、懇親会、花見等々
様々な宴席に共通して、その会の半ばに祝い歌『めでた』が披露されます。これは会
の年長者指名されて出だしを唄い、それを引き継いで同席の全員が声を合わせて唄う
ものです。
『めでた』までは基本的には各自自分の席に居て、『めでた』が披露されて初めて席を
離れて酒を注ぎあうこととなります。何かにつけてお酒が出る土地柄です。飲み過ぎや
飲酒運転をしないことを含め、お酒と上手に付き合いましょう。」


 最近の若い社員達が、古いしきたりや宴席でのマナーを知らないために、このような
マニュアルを作って配布しているそうです。企業でも風習を知らない若い方のために
いろいろと努力されているんですね。

 さて、今日のお話はこのへんで。
来週は第一週ですので、「飛騨の匠 屋台を作った 谷口家」のお話をします。
今日は、この曲でお別れです。「薬師丸博子で セーラー服と機関銃」 
ではまた来週。

徳積善太
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この記事へのコメント

ネコ先生 さんのコメント

放送禁止用語のは一つだけ聞いたことあるけど、そんにたんとあるんかい。
古川やなー (^^)。
Posted on 2008年02月27日 17:19

rekisyrekisy さんのコメント

http://hidasaihakken.hida-ch.com/d2007-06-02.html

そうなんです。詳しくはすでにブログに掲載しています。6/2掲載分です。ご覧下さい
Posted on 2008年02月27日 23:25

エコーアルト2 さんのコメント

何かの検索にかかり、偶然読みました。
面白い記事だったので、最後まで読みましたよ。(笑)
古川は、変な所ですねぇ(笑)

それにしても、研究熱心で、すばらしいです。

また、読んでみます。
私だと気づいたら、一声かけて下さい(笑)
では。
Posted on 2008年12月04日 20:36

rekisyrekisy さんのコメント

エコーアルト2さん、ありがとうございます。
古川は、楽しいところです。

直接メールしますね。
Posted on 2008年12月04日 23:25

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